熱管理および統合型ソリューションの概要

熱管理および統合型ソリューションの概要

Jeff Smoot/著

電子機器が耐えることができる温度閾値はさまざまですが、すべての電子機器には通常の動作が損なわれる前の下限と上限があります。超低温は超高温と同様に、害をなす可能性があります。このブログでは、高温側とその緩和方法について焦点を当てます。とある用途から過剰な熱を取り除くために、必ずしも追加の手順を実行する必要はありませんが、後に発生する熱管理に関する設計の課題を回避するためには、常に最初からこの問題を考慮する必要があります。このため、熱管理の基本、熱がどのように生成され、移動し、除去されるかについて理解し、効果的な熱管理ソリューションを作成することは非常に重要なのです。

熱管理の概念のレビュー

基本的なレベルから見てみると、熱の伝達には、熱伝導、対流、放射の3つの方法があります。電子機器を冷却する際には、これら3つの方法のすべてが利用されますが、実装や有効性に関しては大きく異なります。

熱伝導

熱伝導とは、より冷たい物体がより熱い物体から自然にエネルギーを消費するような、物体を互いに触れさせることによる熱エネルギーの伝達です。これは通常、最も効率的なエネルギー移動方法で、その理由は最も大量のエネルギーを移動するのに必要な表面積が最少ですむからです。

熱伝導の熱原理の図面例
熱伝導は物理的な接触によるエネルギーの伝達である

対流

対流とは、熱エネルギーを再分布させるための空気の動きです。本アプリケーションでは、より冷たい空気がより温かいデバイスのそばを通過し、デバイスから一部の熱を除去した後、そのエネルギーを別の場所に運びます。これは自然な空気の流れに至っては受動的におこなうことも可能ですが、ファンを使って強制的に空気の流れを作り、空気能動をスピードアップすることで、移動可能なエネルギー量を増加させることもできます。熱伝導ほど効率的ではありませんが、この方法はよく使用されており、熱管理システムの最後のステップとしてほとんどのケースで使用されています。

対流の熱的原理の図例
対流とは、熱風が上昇するという自然な傾向による熱の移動です

放射

放射とは、電磁波としてエネルギーを放出することです。物質中の荷電粒子の相互作用と移動により、結合された電界と磁場が生成され、熱の運動エネルギーを、熱源から伝播する電磁エネルギーに変換します。放射は通常、熱伝導や対流が使えない、真空下でのアプリケーションの1要素にすぎません。大半の熱計算では、放射の比較は非常に非効率で、無視されます。

放射の熱的原理の図例
放射とは、熱い粒子が振動したときに発生する電磁波を通した熱の伝搬です

熱インピーダンス

上記の3つの基本的な熱原理とともに見落とされがちなトピックは、熱抵抗や熱インピーダンスです。この係数は、異なる物体間の熱伝達の有効性を定量化するために使用されます。熱インピーダンスは材料、形状、サイズの係数で、熱インピーダンスが小さくなればなるほど、熱エネルギーの伝達は良好になります。熱インピーダンスと所定の周囲温度を使用することで、一定の温度に達する前に、どの程度の電力を放散できるかを正確に計算することができます。これは、熱管理ソリューションの開発時に広く使用されています。詳細は、熱界面材料の重要性に関するブログをご覧ください。

冷却用温度管理オプション

電子機器用の冷却製品は数多くありますが、その効率性とコスト効率により、トップにランキングされる傾向があるのは、カスタムヒートシンク、ペルチェモジュール、DCファンの3つのタイプです。これらはすべて単体でも使用できますが、効果を最大限に高めるためには、多くの場合、統合することでメリットが得られます。

ヒートシンク

ヒートシンクは、あらゆる形状とサイズがあり、装着する装置と空気の間の熱抵抗を低減するという共通のメリットがあります。ヒートシンクは、静かなパッシブコンポーネントで、デバイスの対流表面積を増加させることで機能します。一般的な半導体材料よりも熱を伝達しやすい材料でできています。コストは安価で、故障はほとんどありませんが、多くのヒートシンクは大型のサイズとなるため、表面積が増えることで通常は少なくとも体積が外側に飛び出してしまうという代償がでてきます。また、ヒートシンクは大きな温度変化をもたらしますが、それだけでは他のテクノロジーほど効果的には機能しません。そのため、放熱された熱をより効果的に放散させるために、ファンとペアでよく使用されます。ヒートシンクの詳細については、当社ブログ「ヒートシンクの選択方法」をご覧ください。

ファンまたはブロワー

ファンまたはブロワーは、デバイスやヒートシンクと接触する空気を絶えず移動させ、新鮮で涼しい空気ほど効率的に熱が効率よく除去されない温かい空気のポケットを排除します。ヒートシンクの場合と同様に、ファンの形状、サイズ、電圧レベルが豊富に揃っています。形状とサイズはエアフローと関連しており、通常は1分辺りの立法フィート(CFM)単位で測定されます。設計のニーズによって、特定のファンは、CFMを積極的に調整するためのフィードバックシステムで使用できる速度制御も提供します。ファンは必要なヒートシンクのサイズを減らし、比較的安価ですが、電力を必要とし、可動部分を持つアクティブなデバイスであることからエラーが発生しやすく、ノイズが多くなる場合があります。

ペルチェ・デバイス

最後に、ペルチェデバイスは、ペルチェ効果を使用してモジュールの一方向から多方向に熱を伝達する半導体コンポーネントです。冷却用途では、冷却側はデバイスに取り付けられ、ペルチェモジュールの冷却側から高温側へ熱を能動的に移動させます。このエネルギーのアクティブな移動には、電力も必要です。実際、電力によってシステム全体が加熱されてしまうため、ヒートシンクやファンと組み合わせて使うことが最適です。ペルチェモジュールは、精密な温度調節によってアクティブに制御でき、さらにデバイスを周囲温度より低く設定できるため、その他のオプションと違って、魅力的な温度管理コンポーネントと言えます。そしてペルチェは半導体の原理を介して冷却をおこなうので、故障するような可動部品はなく、柔軟性と堅牢性に優れています。ただし、ペルチェモジュールを追加すると、冷却システムのコストが増大し、アプリケーション全体に対して熱を加え、ファンやヒートシンク単体よりも多くの電力を使います。したがって、ペルチェモジュールを追加することは、すべてのアプリケーションに理想的というわけではありませんが、より厳しい状況においては非常に有効にはたらく可能性があります。当社ブログ「ペルチェモジュールの選択方法」では、このテーマの背景が詳しく説明されています。

プロジェクトにアプローチする際、熱管理の計画を作成することが必要であることが定められている場合、これらの冷却製品のそれぞれの長所と短所についてレビューする必要があります。コスト、サイズ、信頼性、そして電力消費量を考慮することで、設計者は各プロジェクトでどの側面が最も重要かを決定できます。

熱計算の例

次の仮定した問題とソリューションで、統合型熱ソリューションがいかに簡単に作成することがでるかを示してみましょう。

安定して3.3Wの熱を発生する10mm x 15mmのパッケージに入ったデバイスがあるとします。このデバイスは、周囲温度50°Cの環境で使用していますが、理想的な動作温度は40°Cです。ただし、システムのパーツはどれも80°Cを超えることはできません。

この問題を解決するには、デバイスを周囲温度以下に冷却するためのペルチェデバイスが必要になります。このデバイスに最適な、CUI DevicesのCP30138Hモジュールは、3.3Wの熱を除去することができます。このペルチェモジュールは、この場合、熱伝導材料(TIM)SF600Gを使用してデバイスに取り付けます。CP30138Hのデータシート上のグラフで重要なことは、ペルチェモジュールが30°Cの温度差異で3.3 Wの熱伝導を達成するためには、2.6Vで1.8Aが必要であり、つまりペルチェモジュール自体が4.7Wの熱を生成するということです。

ペルチェモジュールの性能グラフ
CP30138Hデータシートからのペルチェモジュールの性能グラフ

これらの8Wをペルチェモジュールからより効率よく除去するには、HSB28-606022ヒートシンクは、SF600GTIMを使用して取付けます。このTIMはサイズが8.8mm x 8.8mmで、熱抵抗は1.076C/W(およそ1.08として計算)になります。一方、ヒートシンクはおよそ400LFMのエアーフローがその上を移動していると仮定され、熱抵抗が0.9C/Wになり、トータル熱抵抗は1.98C/Wとなります。このシナリオでは、400LFMの一貫したエアフローを提供し、CFM-40BGシリーズからのファンが使用できます。CFM定格を必要なLFM定格に容易に変換するために、CUI Devicesでは、オンライン上に誰でも使用できるエアフロー変換計算機を公開しています。

繰り返しますが、このソリューションは、熱を生成するデバイスにTIMを介してペルチェモジュールを接続し、これが次にTIMを介してヒートシンクに接続されます。このすべてが、50°Cの空気の400LFMで冷却されます。

ペルチェデバイス、ヒートシンク、熱伝導材料、DCファンを持つ、統合型熱管理ソリューションの図
ペルチェデバイス、ヒートシンク、TIM、ファンを持つ統合型熱管理ソリューション

これらの様々なデータポイントを念頭に置いて、定常状態でデバイスの温度を計算することができます。このペルチェモジュールは、追加4.7Wの作成コストで、その冷却側をおよそ36°Cに保ちます。そこでヒートシンクは、50°Cの周囲温度環境で8Wの熱を、ペルチェモジュールと1.98 C/Wの周囲温度との間のトータル熱抵抗で消失する必要が出てきます。最後のステップは、8Wを1.98C/Wで乗算します。これにより、周囲温度に対して温度の増加を検出します。この場合、ヒートシンクは15.84°C、すなわち合計で65.84°Cに達し、80°Cの要件には全く及びません。このため、このソリューションはシステムの熱管理ニーズに効果的に対応していると言えます。

結論

熱管理製品は必ずしも必要ありませんが、熱は多くのアプリケーションで管理する必要があるほぼ不安定な要因です。例えば、統合型熱ソリューションは、冷蔵、空調、3Dプリント、除湿器などの多様な消費者製品に見られます。あるいは、これらのソリューションは、DNA合成用の熱サイクラー、レーザー波長のドリフト回避をするためのレーザーなどの科学的アプリケーションや産業アプリケーションにみられます。ヒートシンク、ファン、ペルチェモジュールがどのように機能するかを理解することにより、これらのアプリケーションは、熱設計の限界内に保管することにより、長時間でも効果的に作業することができます。

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Jeff Smoot

Jeff Smoot

バイス・プレジデント(エンジニアリング担当)

2004年にCUI Devicesに入社して以来、Jeff Smootは製品の開発、サポートおよび市場投入に重点を置いて、同社の品質管理およびエンジニアリング部門を活性化してきました。顧客の成功を第一に考えたJeffはアプリケーション・エンジニアリングチームの立ち上げを主導し、設計プロセスにおけるエンジニアに対し、現場やオンラインでのエンジニアリング設計・技術サポートを強化しました。仕事以外では、アウトドア(スキー、バックパッキング、キャンプ)を楽しみ、妻や4人の子供と共に時間を過ごします。そしてJeffはずっとデンバー・ブロンコスを応援しています。