オーディオ設計の可聴周波数帯域を理解する

Jeff Smoot/著

オーディオ設計の可聴周波数帯域を理解する

オーディオシステムを製作する場合は、家庭用か車載用か、内蔵型か携帯デバイス用かに関わらず、コスト、サイズ、品質のバランスを取ることが常に重要です。音質には多くの要因がありますが、その1つは、必要な可聴周波数全域をシステムが再現する能力です。このブログは、それらの周波数とそのサブセットの種類と、それらがオーディオエンクロージャーの設計に及ぼす影響について説明しています。また、異なる可聴帯域が必要な場合や、最終用途以外についても注目します。

可聴周波数帯域とは?

一般に確立されている可聴周波数帯域は20Hz~20,000Hzですが、ほとんどの人の聴こえはこの範囲より狭く、年齢を重ねるにつれて上限と下限が狭まる傾向があります。音楽と可聴周波数の関係は、1オクターブ上がるごとに周波数が2倍になります。ピアノで最低音のラ(A)は約27Hz、最高音のド(C)は約4186Hzです。これらの基本周波数の他にも、音を発生するもののほとんどが、より高い周波数の倍数である高調波周波数を低い振幅数で発生します。例えば、ピアノの27Hzのラ(A)は、これよりかなり静かな54Hzの倍音や、さらに静かな81Hzの倍音を発生します。これらの高調波は、オリジナルの音源を正確に再現したいhifiスピーカーシステムにとって重要です。

可聴周波数のサブセット

20Hz~20KHzの可聴周波数帯域内には、録音や再生用のシステム設計を目的とする可聴域の定義に役立つ周波数のサブセットが7つあります。

周波数のサブセット 周波数帯域 説明
サブバス 16~60Hz これは低音域です。アップライトベース、チューバ、ベースギターなどの低音側はこのカテゴリに入ります。
バス 60~250Hz これは通常の会話音域です。
低中音域 250~500Hz 低中音域には代表的な金管楽器、中音域にはアルトサックスやクラリネットなどの木管楽器があります。
中音域 500Hz~2KHz 名前は中音域ですが、ほとんどの楽器が出す基本周波数の中では高い方に入ります。ここでは、ピッコロなどの楽器が相当します。
中高音域 2~4KHz 前述したように、倍音は基本周波数の倍数になるので、トランペットの基本音域が中低音域にあると仮定すると、倍音は基本周波数の2倍、3倍、4倍となり、この範囲に入ります。
存在感 4~6KHz バイオリンとピッコロの高調波がこれに相当します。
輝き 6~20KHz 6KHzを超える高音は、鳴き声や口笛のような音になります。この帯域では、歯擦音(「s」音とも呼ばれる笛声音)や、シンバルなど一部の打楽器が出す倍音があります。

周波数応答チャート

スピーカーブザーマイクロフォンでこれらの音をどのように再生するかを見るには、周波数応答チャートを使うと便利です。一般に、ブザーは可聴音を出力するだけなので周波数帯域が狭いのに対し、スピーカーは音や声を再現する範囲が広いのが特徴です。

スピーカー、ブザー、その他の出力デバイスの場合、周波数応答チャートのy軸はdB SPLまたは音圧レベルのデシベルで表します(大まかには音量と解釈されます)。マイクロフォンの場合、音を出すのではなく検出しているので、Y軸はdBで感度を測定しています。下の例では、x軸が周波数(対数目盛)で、y軸がdB SPLですから、このチャートはスピーカーなどの出力デバイス用であることがわかります。デシベルも対数で表すので、x軸とy軸は両方とも対数です。

周波数応答曲線図の例
周波数応答曲線の例

このチャートは、異なる周波数で一定の電力を入力した場合に、何dBのSPLが生成されるかを表しています。この場合、出力はややフラットで、70Hz以下の急激な下降と20kHz以上の浅い下降があります。つまり、同じ入力電力を持つこのオーディオ機器は、70Hzと20kHzの間ではほぼ同じ音圧レベルが得られますが、その境界線外では音圧レベルが著しく下がります。

また、顕著なピーク(山)やディップ(谷)が見られる周波数チャートもあり、共振(共鳴)によって出力が増強された点や、何かが出力を消した点を示します。CUI DevicesのCSS-50508Nスピーカーを例として使用すると、下図のように典型的なスピーカー特性を示します。データシートによると、共振周波数は380Hz±76で、これは最初のピークと相関し、その後600~700Hzの間に大きなディップがあります。ただし、800Hz~3KHzの間はフラットな応答です。このスピーカーは41mm×41mmしかないので、低域だけでなく高域も再現できないことが予想されますが、それはグラフでも確認できます。この情報を基に、設計エンジニアは目標とする周波数をスピーカーで再生できるようにします。

典型的なピークとディップが見られる周波数応答曲線の例
典型的なピークとディップが見られる周波数応答曲線

可聴周波数帯域とエンクロージャーの設計

さて、可聴周波数の基本について説明しましたが、可聴周波数帯域はエンクロージャーの選択や設計にどのように影響するでしょうか?実際には、可聴域は複数の点でエンクロージャーの設計に影響します。

スピーカーとエンクロージャーのサイズ

小型のスピーカーは速く動けるので、不要な高調波を減らしながら、高い周波数を正確に生成できます。マイクロスピーカー用エンクロージャーの設計に関するブログで概説したように、小型のスピーカーは小型のエンクロージャーに対応するので、素材のスペースとコストを節約できます。

極低周波数で同じdBのSPLを生成するには、十分な空気を移動させるための大きい振動板が必要です。これは、高音と同じdBのSPLを感知するには、十分な空気を動かさなければならないという本来の課題に起因します。良い点は、大きい振動板によって重量が増えても、動きがはるかに遅い低周波では、さほど問題にならないことです。

共振

ほとんどの物体には共振(共鳴)周波数、つまり物体が自然に振動する周波数があります。例えば、ギターの絃をはじくと、ギター独自の共振周波数で振動します。スピーカーをギターの弦の近くに置いて共振周波数を弾くと、振動が始まり、時間と共に振幅が大きくなっていきます。これと同じ現象が他の物体でも発生し、オーディオに関しては、周囲の物体との間で不要な雑音やうなり音が発生することがあります。共鳴や共振周波数に関する当社のブログでは、このトピックについてより詳しく取り上げています。

エンクロージャーを設計する場合は、エンクロージャー自体の自然共振周波数がオーディオ出力と同じ帯域でないことを確認する必要があります。そうでないと、スピーカー自体が非線形出力と不要な倍音を発生することになります。同時に、用途によっては、ボックスの共振の制御や共振範囲の拡大が求められることもあります。

素材

スピーカーやマイクロフォンは、固定している部品、曲げ弾性が必要な部品、振動時も剛性を保つ必要がある部品の絶妙なバランスで設計します。特にスピーカーに関しては、コーン(振動板)は、速く反応するためにできるだけ軽くする必要がありますが、変形せずに動けるように硬く成形することも必要です。CUI Devicesのスピーカーに使用されている最も一般的な素材は、紙とマイラーです。これらは非常に軽くて硬いですが、マイラーはプラスチックの一種で、湿気や湿度の耐性もあります。また、フレームに振動板を接続するゴムもあります。これは、激しい動きにも壊れない強度を持ちつつ、コーンの動きを妨げないように、できるだけ柔軟でなければなりません。

標準的なスピーカー構造図
一般的なスピーカー構造

感度、周波数帯域、堅牢性、SPL範囲のこのトレードオフは、マイクロフォンの素材にも当てはまります。マイクロフォンには、単純なエレクトレットマイクロフォンやMEMSマイクロフォンがあります。これらは耐久性、小型、低電力の要件を満たしていますが、周波数と感度は十分とはいえ限定的です。一方、金属製の細いリボンを振動板として使用したリボンマイクは、感度と周波数帯域に優れていることで知られています。トレードオフとしては、リボンマイクは非常に繊細で、多くの打楽器には使用できず、振動板が破れる可能性があるので、カバーなしで持ち運ぶことができません。

様々な素材のコストに加えて、このようなトレードオフは可聴範囲によっても異なります。低音域のスピーカーでは、コーンの重量をそれほど気にする必要はありませんが、大きい動きに対応できるサスペンションが必要になります。

エンクロージャーに使用される素材の種類は、共振や吸音力にも影響します。エンクロージャーを設計する際、主要な役割は、背後で発生する位相がずれた音を消すことなので、エンジニアは音を効果的に吸収する素材を追求することになります。これは、消すのが難しい低周波音で特に重要です。

可聴周波数帯域の最終設計に関する検討事項

あらゆる音を忠実にフルレンジで再現できるのはごく限られたシステムのみで、1台のスピーカーとエンクロージャーでこれを提供できるものは存在しないという点に留意することが重要です。特に、極端な周波数では、特殊なスピーカーやエンクロージャーが必要ですが、真の意味で正確に再現するには、最もリニアな出力を生み出すようにチューニングされ、あらゆる音域でバランスの取れたスピーカーが必要です。

多様な周波数波形
様々な周波数があるため、設計や素材によって異なるアプローチが求められます。

次に、大半の用途ではそれほどの忠実度を必要としないため、リニアな出力が理想的な結果とは限りません。例えば、電話は人間の基本的な声帯範囲をカバーすればよいわけで、周波数を倍化、三倍化して高調波に対応したとしても、20Hz~20KHzの範囲には及びません。もう一つの例が通知やセキュリティの用途です。これは、周波数範囲がごく小さい羽音、震音、高音で十分ですが、様々な音圧レベルが必要です。この設計では、このトレードオフが周波数範囲からコスト、サイズ、パワー、音量にシフトしたブザーやサイレンが良い選択肢となります。

最終的には、自分のプロジェクトの制約を認識し、トレードオフに関する決定を下せることが、エンジニアや設計者に不可欠な要素です。

結論

可聴周波数帯域がすべてとは言えませんが、スピーカー、ブザー、エンクロージャー、マイクロフォンの設計と部品の選択において大きな部分を占めています。この帯域と、それが録音や再生の用途に及ぼす影響、オーディオ関連機器の物理的な制限や制約との関係について基本的な理解があれば、自ずから設計プロセスを導いてくれるはずです。CUI Devicesの幅広いオーディオコンポーネントは、多様な周波数範囲の様々な用途に対応するソリューションを提供しています。

その他のリソース


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Jeff Smoot

Jeff Smoot

バイス・プレジデント(エンジニアリング担当)

2004年にCUI Devicesに入社して以来、Jeff Smootは製品の開発、サポートおよび市場投入に重点を置いて、同社の品質管理およびエンジニアリング部門を活性化してきました。顧客の成功を第一に考えたJeffはアプリケーション・エンジニアリングチームの立ち上げを主導し、設計プロセスにおけるエンジニアに対し、現場やオンラインでのエンジニアリング設計・技術サポートを強化しました。仕事以外では、アウトドア(スキー、バックパッキング、キャンプ)を楽しみ、妻や4人の子供と共に時間を過ごします。そしてJeffはずっとデンバー・ブロンコスを応援しています。

 
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